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Vol.6 プロセスの自走化:スキル・ナレッジ

こんにちは、bridgeの大長です。本連載「新規事業を自走する組織になるための解体新書」では、企業が新規事業を自走できる組織になるために必要な10の観点に焦点を当て、それぞれのテーマについて具体的な事例をもとに紹介しています。

今回は第6回目、「スキル・ナレッジ」をテーマに、新規事業を自走するための学びと知識の共有の重要性を解説します。帝国データバンクの調査によると、新規事業の阻害要因として、「能力のある従業員の不足」が最大の課題とされ、組織のスキル育成が成否を大きく左右することが明らかで、bridgeでも新規事業開発組織だけでなく、人事部の担当者からも新規事業人材の育成に関する悩みや相談を多くいただくようになりました。

新規事業のスキル・ナレッジはどのように備わるのでしょうか?今回も従来型の組織と新規事業を自走できる組織を対比しながら、新規事業開発組織における「スキル」「マインド」「ナレッジ」それぞれの違いについて見ていきましょう。

1. スキル:「インプット型の学び」から「アウトプット型の学び」へ

従来の組織では、座学や研修を通じたインプット型の学びが中心です。社員が知識を習得するための研修が用意されていても、その知識が実際のプロジェクトや問題解決にどのように応用されるかは学び手次第であり、実際にスキルが身に付くかどうかは不確かです。

新規事業を自走できる組織では、この学び方がアウトプット型の学びが重要視されます。bridgeで過去に取り組ませていただいた静岡大学の取り組みにおいても、自分自身で考案したプロジェクト(マイプロジェクト)を通して学ぶことが重視され、実際の経験から新規事業の実践的なスキルや問題解決能力を高めことが期待されています。静岡大学では、学生が自分のアイデアでプロジェクトを立ち上げ、プロジェクト遂行を通じて試行錯誤することの重要性が強調されています。実践の場で学び、成果を創り出すこの学び方が、実務でも即応力や判断力を養うカギになります。

2. マインド:「社内に閉じたマインド」から「創発マインド」へ

新規事業には、社内だけで通用する考え方にとどまらない「創発マインド」が求められます。従来の組織では、社内での効率やルールが重視されることが多く、知識も社内で閉じたものとなりがちです。これにより、業界外からの刺激や新たな発想が入りにくくなり、発展のスピードが制約されます。

一方、新規事業を自走する組織では、業界を超えた知見やアイデアを取り入れ、柔軟な発想で新しい価値を創造することが重要です。例えば、森ビルが運営する「ARCH」は、社外のネットワークを活用し、オープンイノベーションの場を提供するインキュベーションオフィスです。社内に留まらず、外部の専門家や他業界の知識を取り入れることで、社内外の視点を融合した新たな発想を促進しています。同様に、リクルートの「Tech Lab Paak」や、NTTデータの「Open Innovation Contest」なども、社内外の協力を促進する起業家コミュニティとして、新しい事業創造に積極的に取り組んでいます。

3. ナレッジ:「活動報告」から「ナレッジの昇華」へ

従来の組織では、プロジェクトで得られた成果や進捗が活動報告として記録されることが多いものの、それが個別の事例として終わり、組織全体の知見に昇華されることはあまりありません。そのため、せっかくの成功や失敗の経験が十分に活かされないままとなります。

新規事業を自走できる組織では、個々のプロジェクトから得られた知見を「ナレッジ・ノウハウ」として蓄積し、組織全体で共有し合う文化が求められます。リクルートの「コンピタンスマネジメント室」は、各部門の知見やスキルを収集し、全社的に共有する役割を担っており、個々の経験を組織全体のナレッジに変える仕組みを整えています。

さらに、リクルートでは「FORUM」という仕組みを通じて、社内外の専門家が集まり、実務の中で得られたナレッジを抽出し、社員に共有するナレッジマネジメントの仕組みが体系化され、企業文化となっています。(参考PDF「リクルートのナレッジマネジメント」) このように、単なる活動報告ではなく、実際のプロジェクトで得た知識がナレッジとして蓄積され、組織全体で有効活用される仕組みが確立されています。

◆ひとりからはじめる第1歩

皆さんの組織では、新規事業で得たナレッジや教訓をどのように共有していますか?
多くの場合、アイデアの良し悪しや確からしさばかりが強調され、そこに至る過程で得た洞察や悩み、躊躇した瞬間が見過ごされてしまいます。
しかし、個々の挑戦から得た深い洞察こそが、組織の成長に欠かせない資産です。
まずは、半期に一度、各メンバーが経験した試行錯誤や失敗、気づきを自由に共有する場を設けましょう。
個々の経験が組織全体の知見となり、新たな視点やアプローチを生み出すことで、次の挑戦に活かされ、組織のナレッジベースが強化されます。

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Vol.0 • はじめに:新規事業を自走する組織とは
Vol.1 • コミットメント: 経営陣の本気度が新規事業の成否を決める
Vol.2 • 方針と目標: 成功への道筋を示す新規事業のフェアウェイとOB
Vol.3 • 仮説検証: 小さく試して、早く学ぶ!失敗を恐れない挑戦術
Vol.4 • プロセスと支援体制: 新規事業を動かすプロセスとサポートの仕組み
Vol.5 • 意思決定: 0→1を実現するための決断と判断基準
Vol.6 • スキル・ナレッジ: 組織全体でスキルと知識をアップデートする方法
Vol.7 • 評価マネジメント: 成功を見逃さない!フィードバックと報酬の最適化
Vol.8 • 社内連携: 部門の壁を超えて、リソースをフル活用するコラボの力
Vol.9 • モチベーション: 新規事業の熱を高める社員のやる気スイッチ
Vol.10 • カルチャー: 挑戦を支える強い組織文化の育て方

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