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Vol.1 リーダーシップ: 経営のコミットメント

こんにちはbrigdeの大長です。本連載「新規事業を自走する組織になるための解体新書」では、私たちが多くの企業との共創活動や対話を通じて見つけ出した「新規事業を自走化するための10の観点」に焦点を当て、それぞれのテーマについて具体的な事例をもとに紹介していきます。
連載を通じて、新規事業の自走化を目指す企業が抱える課題を解決するための一助となることを目指しています。

◆新規事業の自走化におけるリーダーシップの重要性

新規事業の自走化に向けた組織作りにおいて、リーダーシップは特に重要な要素です。
ここでは、経営陣が明確な方針や目標を具体的に示し、その成功に強くコミットする姿勢を指します。リーダーシップは、新規事業の方向性を示すだけでなく、プロセスや組織全体が自律的に動くための原動力となります。経営陣のリーダーシップがしっかりと発揮されることで、組織全体が一丸となり、スピーディーに課題解決に向かうことが可能となり、新規事業の成功確率が飛躍的に向上すると言われています。今回と次回の2回にわたり、このリーダーシップに焦点を当て、具体的な事例を通じて深掘りしていきます。

◆新規事業におけるコミットメントとは?

今回のトピックは、リーダーシップの中でも特に重要な「コミットメント」についてです。

新規事業の自走化に必要なコミットメントとは、中長期の変革に必要な明確なビジョンと戦略を策定し、その実現のために十分な財務的資源、人材、技術的サポートを投入することです。
さらに、経営陣は変革の推進者として率先して行動し、社員を鼓舞するリーダーシップを発揮しなければなりません。

新規事業を成功させるために必要なコミットメントの発揮方法には、従来の組織と新規事業を自走できる組織の間で大きな違いがあります。この違いを理解することは、新規事業の自走化を実現するための第一歩です。

◆従来の組織:限定的なコミットメント

従来の組織において、新規事業に対するコミットメントは、主に社内向けに発信されることが一般的です。経営陣は新規事業の方針や目標を策定しますが、その表現は数字や計画といった合理的な要素に偏りがちです。こうしたアプローチでは、社員に対して「新規事業は重要だ」というメッセージは伝わるものの、具体的な行動を促すまでには至りません。また、社内でのコミットメントが中心になるため、顧客や株主、さらには社会全体に対するメッセージが不足しがちです。その結果、経営陣の関与が評価者としての役割に留まり、実質的なリーダーシップが発揮されにくくなります。このような状況では、新規事業に対する投資も慎重になりがちです。意思決定に時間がかかり、ヒト・モノ・カネといったリソースの配分も限定的になります。結果として、組織は新規事業に対して消極的になり、挑戦の機会を逃すことが多くなります。

◆新規事業を自走できる組織:積極的かつ広範なコミットメント

一方、自走する組織では、新規事業に対するコミットメントが社内外に広く発信されます。
経営陣は、社内の社員だけでなく、顧客や株主、さらには社会全体に向けて、明確なビジョンと目標を掲げ、その実現に向けた強い意志を示します。このアプローチは、数字や計画だけでなく、情熱やビジョンといった情理に基づく要素も含んでいます。これにより、単に合理性を追求するだけではなく、組織全体が感情的にも新規事業に引き寄せられ、強力な推進力が生まれます。経営陣は、評価者としての立場を超えて、実質的な推進者としての役割を果たします。これには、新規事業の成功に必要なリソースを積極的に配分し、迅速な意思決定を行うことが含まれます。例えば、プロジェクトの初期段階での投資や、人材の配置、技術支援など、必要なリソースを適時に投入することで、組織全体がスピーディーに動けるようになります。

リーダーシップが新規事業の自走化において重要な役割を果たすことを理解するために、2つの事例をご紹介します。

◆事例1: AGC / 戦略的「両利きの経営」

AGCは「両利きの経営」という戦略を採用し、既存事業と新規事業の両立を図っています。
経営陣は、既存のガラス事業の深化を続け、技術革新や生産効率の向上に注力しています。
これにより、安定した収益基盤を維持し、新規事業への投資を可能にしています。
一方で、スマートフォン用カバーガラスやディスプレイ用ガラスなど、新たな市場を開拓するための新規事業にも積極的に取り組んでいます。
これらの新規事業には高いリスクが伴いますが、経営陣のリーダーシップが、果敢な投資と迅速な意思決定を後押しし、組織全体が新しい挑戦に向けて一致団結する環境を作り出しています。
このように、経営陣のコミットメントは、既存事業の強化と新規事業の推進をバランスよく行い、企業の持続的な成長を支える重要な要素となっています。

参照記事

◆事例2: コマツ / 建機からスマートコンストラクションへ

一方、コマツは建機製造の会社から、デジタル技術を活用した「スマートコントラクション」という新たな事業分野に大きく舵を切り、成功を収めました。
従来の建設機械事業から一歩踏み出し、建設現場の効率化と生産性向上を目指すこのプロジェクトには、既存のビジネスモデルを大きく変革する必要がありました。
経営陣は、新技術への大規模な投資を決断し、プロジェクトに必要なリソースを惜しみなく投入しました。
また、従業員が新しいビジネスモデルに適応できるよう、研修やトレーニングプログラムを整備し、組織全体が新たな挑戦に対応できるようにしました。
このように、経営陣の強いコミットメントが、組織全体を動かす原動力となり、コマツが新たな分野で成功を収めるための鍵となりました。

これらの事例から明らかなのは、経営陣のコミットメントが新規事業の成功において極めて重要な役割を果たしていることです。
経営陣が明確なビジョンを持ち、その実現に向けて積極的にリーダーシップを発揮することで、組織全体が新規事業に向けて自律的に動き出し、持続的な成長を実現することができます。

今回の記事では、新規事業の自走化において、特に「経営陣のコミットメント」の重要性に焦点を当てて考察しました。

あなたの組織では、どこで「経営陣のコミットメント」を感じることができるでしょうか?経営陣との対話を通じて、その発信や行動の背景にある想いやビジョンを改めて捉え直し、社内外に伝えていくための活動を始めてみませんか?

次回も引き続き、具体的な事例を交えながら、さらに理解を深めていければと思います。どうぞ楽しみにお待ちください。

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Vol.0 • はじめに:新規事業を自走する組織とは
Vol.1 • コミットメント: 経営陣の本気度が新規事業の成否を決める
Vol.2 • 方針と目標: 成功への道筋を示す新規事業のフェアウェイとOB
Vol.3 • 仮説検証: 小さく試して、早く学ぶ!失敗を恐れない挑戦術
Vol.4 • プロセスと支援体制: 新規事業を動かすプロセスとサポートの仕組み
Vol.5 • 意思決定: 0→1を実現するための決断と判断基準
Vol.6 • スキル・ナレッジ: 組織全体でスキルと知識をアップデートする方法
Vol.7 • 評価マネジメント: 成功を見逃さない!フィードバックと報酬の最適化
Vol.8 • 社内連携: 部門の壁を超えて、リソースをフル活用するコラボの力
Vol.9 • モチベーション: 新規事業の熱を高める社員のやる気スイッチ
Vol.10 • カルチャー: 挑戦を支える強い組織文化の育て方

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