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bridgeはこれまで、新規事業をつくるための組織風土、仕組みづくりを大切に「新規事業を自走するための組織づくり」のソリューションを大企業中心に提供してきました。2019年に、書籍『両利きの経営』が日本で発売されて以来、経営者のイノベーションに対する関心は増々高まっています。
しかし残念ながら、多くの企業では新規事業を生み出す「自走できる組織」をつくるための方法論を得られていません。もしくは、事業ポートフォリオを組み換え、戦略実行のための組織体制を整えることはできても、その後の「知の探索(新規事業に向けた実験と行動)」が機能せず、必要な組織能力を形成できていない現実があります。
そこで登場するのが、組織づくりの道筋を描き、実行に移す「プロジェクトデザイナー」の存在です。今回の記事では改めて、bridgeが考えるプロジェクトデザイナーの役割に焦点を当て、その有用性を確認していきたいと思います。
新規事業を自走する組織づくりのための第一歩は、プロジェクトの存在意義を定め、実現したい世界を描くところからスタートさせます。イノベーションの実現に向け、これから前例のないビジネスに挑戦する以上、プロジェクトメンバー全員が共感・共鳴できるビジョンを描くことが大切です。様々なステークホルダーが関与するため、企業利益の追求だけではモチベーションの源泉にはなり得ません。
ここで役立つのが、弊社独自の組織診断指標「Innovation Index 25*」です。経営陣を中心に、課題に対する目線や方針を「定義」「目標・指標」「スキル・メソッド」「仕組み化」「カルチャー」の5項目に従い、部門を超えてすり合わせる。これによりお互いの課題認識を表出させる効果が期待できます。具体的なアセスメントの方法は以下の通りです。
詳細については、【動画あり】10分でわかるbridge事業案内 の記事内でも詳しく触れているので併せて参照してもらえたらと思います。
ビジョンを描く上では、予定調和な着地にならぬよう、メンバーに対して「どのようにすれば自社のイノベーション活動を加速できるだろうか?」という問いに対してコーチング(※)を用いて問いかけます。「プロジェクトを絶対に成功させる」という意思を引き出していく。これにより大きな推進力を得ることができるのです。
※ ここでのコーチング技術とは以下のような手法を指します
スポンサーシップ(存在承認):メンバーの能力を最大限に引き出す姿勢
ペーシング(観察・傾聴):相手とペースを合わせ、信頼関係を構築
リーディング(質問・説明):効果的な質問による、気づきと変化の促進
組織の課題が特定され、社内でタスクフォースが組成されると、次にビジョン実現に向けた運用がスタートします。この段階でプロジェクトデザイナーが果たす役割は「チームビルディング」です。部門を超えた協力関係を築くことで仲間を巻き込み、ベクトルを合わせて取り組めるようになります。また、外の視点を持ち込むことでより強固なチームの結びつきも可能とさせます。
ここでは
の2方向から、チームビルディングのプロセスを整理します。
プロジェクト推進の現場をイメージしてください。例えばミーティングで人事領域の課題が浮かび上がったとしましょう。その際、集まった人員が研究開発のメンバーだけでは、どれだけ議論を重ねても現実は前に進みません。
しかし、人事部門で働く次世代リーダーを仲間に巻き込めればどうでしょうか。組織横断の取り組みによって、一気にプロジェクトが前進するイメージが湧いてくると思います。
次世代リーダーがトップに提言を行い、合意を取りながら各メンバーに落とし込む方法を「ミドルトップダウン」と私たちは呼んでいます。部門を横断し、多様なステークホルダーが絡む利害関係を超えて社内をつなぐことは、プロジェクトを前進させる大きな効果が期待できるのです。
また、既存事業に最適化された組織の中だけで議論をすると、今まで前提とされてきた原理原則や成功パターンに引っ張られてしまいます。なぜそれが問題かというと、外から見れば「大きな違和感」があってもプロジェクトチームのメンバーがそれに気づくことができないためです。結果的に「新しい視点」を手にすることもできない。
これを解決するには、同質化された組織の枠を飛び越える必要があります。自社または同じ業界の「外」にある経験やナレッジを社内に取り込み、プロジェクトチームと結びつけていく。プロジェクトデザイナーにはそういった役割も求められるのです。
「外の視点」を加えることはチームの一体感を生むだけでなく、計画の「実現速度」を早めることも可能とします。ここでプロジェクトデザイナーが担う役割は、社内と社外をつなぐコネクターとしての機能です。
例を挙げてみましょう。仮に「イノベーション活動を評価したい」ということであれば、先行して導入している企業の人事担当者に話を聞きます。「事業のDXを推進したい」というのであれば、DXシフトに成功した事業会社からノウハウを学ぶ、といったことが考えられます。
実践者とのコミュニケーションを通じて、ぼんやりとした輪郭だったものをハッキリとさせる。メンバーの一人ひとりに「自分たちにもできる」と思ってもらえることがここでは重要になります。
テーマの解像度を高め、当事者意識や所有感を高めながら議論の精度を磨き上げるプロセスをプロジェクトデザイナーは提供するのです。
仮にプロジェクトデザイナーが不在で、外との接点が失われた場合には何が起こるでしょうか。社内のメンバーや業界内の同質化した知人のアドバイスしか得られず、プロジェクトの進捗も一進一退を繰り返すことになるかもしれません。
一部の企業ではすでに、書籍『両利きの経営』に書かれていた理論を実践に移し始めていると感じます。単発で提案制度を繰り返す方法ではなく、組織を変革し、「主力事業の絶え間ない改善(知の深化)」と「新規事業に向けた実験と行動(知の探索)」を両立させる段階に来ていると思うのです。
その際、プロジェクトデザイナーの存在は「新規事業を自走するための組織づくり」に大いに役立つでしょう。ここまでお伝えしたように、プロジェクトの推進を阻害する2つの要因を解決できるためです。
改めて整理すると、1つめの問題は、新規事業を推進する組織になるために「何を・どう進めるべきか」がわからないこと。2つめは、そのような部門共創のプロジェクトを推進する存在がいないことにあります。
これらの問題を解決し、「両利きの経営」の実装支援をするプロジェクトデザイナーの存在は、今後ますます活躍の場を広げるのではないでしょうか。
私たちもまた、プロジェクトデザイナーを起点とした組織改革の伴走支援に取り組んでいます。「知の探索」に向かうフェーズにある企業の一助になれば幸いです。
取材協力:株式会社ソレナ