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メンバー紹介 三冨 敬太 プロトタイピング専門家

メンバー紹介 三冨 敬太 プロトタイピング専門家

2021.06.09

本企画では、bridgeメンバーが持つ専門性やルーツを掘り下げるとともに、現在進行中のプロジェクトや未来のビジョンを紹介します。第3回はプロトタイピング専門家の三冨敬太。三冨はプロトタイピングに学術と実業の両面からアプローチする、日本で数少ない専門家の一人。そんな彼がbridgeに参画した背景や、同社での活動内容について伺いました。

三冨 敬太 プロトタイピング専門家

慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の研究員としてプロトタイピングを研究。プロトタイピングの研究とともに、研究で得た知見の実践を重視している。デザインファームTsukuru to Ugoku Design、障害のない働き方をデザインする会社veerncaを創業。広告プロダクションのステッチでは執行役員として防災や高齢者事業などのソーシャルプロジェクトを推進。▼facebookTwitter

 

アカデミック・ビジネスの両面を知る「プロトタイピングの第一人者」

─ プロトタイピングの専門家として、研究活動を続けながら企業に伴走しています。ここまでの経緯を教えてください。

私は2018年にデザインファームのTsukuru to Ugoku Design株式会社を設立し、ワークショップや各種デザインなどをお客様に提供しています。

また以前から広告会社の株式会社ステッチに執行役員として所属し、新規事業を管掌。「障害」をデザインで解決するveernca合同会社も設立しています。

ステッチでは広告としてWebサイトやアプリを製作しているのですが、どうしたら効率良く、いいものづくりができるのだろうと日頃から考えていて。そこからデザイン思考に興味が湧き、2018年4月に慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科に入学しました。

プロトタイピングを研究し、卒業後も研究員として在籍。日本デザイン学会や日本創造学会などで活動しているほか、2021年5月よりクリエイティブの専門誌「ブレーン」にて「プロトタイピング発想のデザイン」を連載。並行してveerncaやステッチでの新規事業立ち上げ時に、研究したプロトタイピングを実践しています

新規事業の成功確率向上に寄与するプロトタイピング

▲図-1「開発プロセスと分類」

プロトタイピングとは、商品やサービスを考案する際に試行錯誤する方法のことですが明確な定義はなく、そのため人によって定義や解釈、アプローチが異なり、混乱の種になっています。

その混乱を整理するために、図-1のように開発プロセスと必要なプロトタイピングをマッピングしています。具体的にはアイデアの創造からコンセプトの策定、概念設計、結合、そして生産・市場投入という流れの中で、ライフサイクルに応じて適切なプロトタイピングを行う。そうすれば効率的に良いものが生み出せるのです。

プロトタイピングは元々、デザイナーやエンジニアなど一部の人間が使用する手法でしたが、現在はさまざまなツールの発達・普及により、誰でもできるようになりつつあります。この「プロトタイピングの民主化」が進むのを見越して、プロトタイピング概論のレクチャーや実践のお手伝いをしているところです。

現在はミズノ株式会社や株式会社ネクスウェイに伴走してプロトタイピングをサポートし、味の素株式会社ではプロトタイピング講座という研修を実施しております。

─ プロトタイピングを行うメリットや、プロトタイピングを経て生まれたサービスの具体例を教えてください。

▲図-2「プロトタイピングの効果(役割)」

プロトタイピングを行うメリットは数多くあるのですが、特に「コミュニケーションにつながる」「意思決定につながる」「学習につながる」の3つがメリットだと認識しています。

プロトタイピングをすることで、それぞれの意見が出てコミュニケーションがより円滑化されます。その過程で、自分たちの仮説を強化したり、今までにない気づきを得ることもできます。そのコミュニケーションと学習が、具体的な意思決定の材料となるのです。

以前veerncaで、仮想の「メモ空間」を作って情報を管理できる「moom」というアプリを製作しました。視覚障害当事者であるveerncaパートナー松村氏の、「情報を覚える際、自分の周りに部屋のような空間を作っている」という発言から着想しています。

この情報の管理方法が非常に面白かったので、すぐにプロトタイピングをしてみることにしました。

まず、管理する情報として10種類の名言を用意し「どのくらい覚えたいか」「共感するか」などの観点でCAD上で360度の空間をつくりました。そしてメンバーごとに名言を配置します。覚えたい名言は前方に、覚えたくない名言は後方に。共感する名言は近くに、共感しない名言は遠くに、という具合です。

その結果、人によって違う配置になることや、同じ「共感する言葉」でも人によって置く場所が変わることなどがわかって。結果として2021年3月に展示会に出展し、商品化を検討しているところです。

通常の開発なら「情報の部屋」というコンセプトが出た時点で企画書にまとめ、速やかに開発に移ります。そうではなく、試しにつくってみることで学習が行われてコミュニケーションも生まれる。

新規事業を成功させるための方法は、リーンスタートアップやデザイン思考、エンジニアリングデザインなどさまざまですが、プロトタイピングはこれらすべてに共通して必要です。開発に移る前にプロトタイピングを行うだけで、新規事業の成功確率は高まると考えています。

▲まるで部屋にモノを配置する感覚で情報を管理できるツール「moom」

「The Prototyping Learning Sprint」ディレクターとして活躍

─ bridgeに関わるようになった経緯や、活動内容を教えてください。

私がbridgeに参画するきっかけになったのは、2021年1月に私が登壇したプロトタイピングのイベントです。このイベントに大長さんが参加されていて、その後「プロトタイピングを体系立ててクライアントに説明してほしい」と声をかけていただきました。そしてミズノさんのプロジェクトに参加し、bridgeでの活動がスタートしています。

現在は企業様の伴走をしつつ、新たにリリースしたコンテンツの全体ディレクションも担当しています。プロトタイピングを身につけるための実践型講座「The Prototyping Learning Sprint」です。

この講座の目的は、ものづくりに苦手意識のある方でも自信を持ってプロトタイピングが行えるようになること。「Basicコース」「Advanceコース」というレベル別のコースを用意し、短期間かつオンラインで受講できるプログラムを提供しています。

UI・UX、ノーコードツール、映像やグラフィックなどの専門家が、一連の流れをサポートしていて、運営としてbridgeや私が関わっています。今後ぜひ多くの方に受講していただきたいですね。

─ 今後bridgeで実現したいことを教えてください。

これまで通りプロトタイピング専門家としてお客様に併走し、学術的な知見も現場で共有していきたいと思っています。bridgeには、UXやクリエイティブ、PRなど、専門性の異なるメンバーが在籍しているので、その専門性を掛け合わせて良い結果が生まれるのが有意義だと思います。

自社の力だけで新規事業の文化を根付かせることは、思っている以上に大変だと感じます。私の経験や知見を多くの企業でシェアさせていただき、新規事業が生まれやすい環境作りをサポートしていきたいですね。

 

▼「The Prototyping Learning Sprint」
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