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第一回:bridgeはどのように組織変革を支援するのか
新規事業を通じた創造的な問題解決のためには、組織と個人、顧客ニーズを見極めた実験思考が不可欠。先行きが不透明な時代だからこそ、組織にも個人にも、環境がどのように変化しても柔軟かつ迅速に対応できる、自分事としての覚悟が重要です。
新規事業や社内イノベーションと聞いて、経営層の皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?新しいビジネスフィールドへの挑戦、組織内の活性化、次世代リーダーの育成など、明るい希望と未来を描く方もいらっしゃるでしょう。
しかし現実には、トップの掛け声ばかりが大きくて、なかなか具体的な成果につながっていない例も見られます。経営層1万人にアンケートを取ったレポートによると、「新規事業の阻害要因」として最も多かった回答は「能力のある従業員の不足」でした。
新規事業の阻害要因は、本当に、能力がある従業員がいないことなのか?
出典:事業を創る⼈の⼤研究
しかし、その評価は、果たして妥当なのでしょうか?『社内提案制度は作ったものの、どうも盛り上がっていない』『当初はそれなりに機能していたが、いつの間にか、提案が先細ってしまった』『うまくいっていないことは感じているが、どこの、何がおかしいのかがわからない』…このような声もよく聞きます。
bridgeは、新規事業が成功しない原因は、従業員の質や量に問題があるのではなく、そもそも「新規事業に必要な能力」とは何なのか?その判断基準がないことが原因だと考えます。
もし、営業や経理、法務の仕事なら、大体3年ほどで一定のスキルの人材に育てることも可能でしょう。しかし、新規事業については、体系的なリソースもナレッジも十分ではありませんでした。新規事業を経営企画部などが担当しているケースもありますが、どうしても目先の売上が立つかどうかといった、短期的でわかりやすい成果を求めてしまいがちです。新規事業に対する考え方が間違っていたり、学習機会がなければ、真の成果にはつながるはずがありません。
社内の新規事業開発がうまくいっていない企業のほとんどが、同じ原因を抱えています。それは、新規事業の目的や目標、手法、人材は、既存事業とは違うにも関わらず、同じようなやり方で進めてしまっていることです。すでにあるナレッジやリソースに頼るあまり、最初から戦略を考えてしまい、イノベーションに至るブレイクスルーにはならない矛盾で、混乱している例を多く見受けます。これは、以下の図で示す初期の「実験思考」の能力が不足している状況です。
事業づくりのプロセスにおいて、初期段階で特に重要な「実験思考」
AIを初めとするテクノロジーがさらに進化・普及し、厚生労働省が「人生100年時代」を掲げ、働き方もシフトする現代。bridgeは、人間に求められるのは、実験思考に裏打ちされた「創造的な問題解決」であると考えています。
これは、社内の特定の人だけに関係するマインドではありません。個々人が『自分に何ができるか?』を問い続け、能力を鍛えることで、仕事のやりがいを感じられるようになる。組織と個人の両方にとって重要な意味を持つのが、新規事業の「行動原則」です。
そのためには、誰もが新しいことに挑戦しやすく、仮に失敗しても再チャレンジしやすい環境をつくることが重要です。喩えるなら、体調が気になりだして、急に、ハードな負荷を掛けて運動を始める対処療法ではなく、日々の生活リズムや食事のバランス、適度な運動で、体質を少しずつ、しかし着実に改善していく根本治療的なアプローチです。
経営陣の全員に起業経験があるbridge自身も、この姿勢を実践しています。自分がやりたいことを基点に事業を作り、そこで得られたナレッジは、座学で単なるフレームワークを提供するのではなく、五感を使って体験する「実践知」として企業の皆さんへ提供しています。
どのような規模や業種の組織でも、社内起業家が意識すべき3つの視点があります。それが、「自分(YOU)」と「組織(COMPANY)」、そして「顧客(CUSTOMER)」です。組織の中でイノベーションを力強く推進する人は、これら3つの円すべてが重なったスイートスポットを狙うことが重要です。
社内起業家に求められる能力とは、中央のスイートスポットを外さないこと
しかし、新規事業がうまくいかないほとんどの場合、このフォーカスがずれてしまっています。さまざまなケース別で考えてみましょう。
例えば、自分が率先してやりたい情熱もあり、組織にもそれを実践する環境がある、しかしそもそも顧客が求めていければ、マーケットニーズには応えられません。つまり、 顧客の問題は特定できても、ソリューションが採用されないのです。スタートアップの失敗理由として最も多いのがこれで、実に42%を占めているレポートがあります。
出典:Why Startups Fail: Top 20 Reasons l CB Insights
https://www.cbinsights.com/research/startup-failure-reasons-top/
「顧客」ニーズに応えられる場合でも、社内起業家としての「自分」のビジョンや情熱が、「組織」の方針と重なっていなければ、社内からの協力が得られません。大企業であっても、実はわずか数人のプロジェクトだという例も現実にあります。組織としての圧倒的なアセットを持っているにもかかわらず、少数精鋭で目的に特化し、小回りが効くスタートアップにはとても太刀打ちできず、孤軍奮闘した揚げ句、潰れてしまいます。
また、「組織」と「顧客」の条件が満たされている場合でも、「自分」事として取り組む情熱や覚悟がなければ、新規事業という圧倒的に不確実なプロジェクトは実現しません。「しない」「できない」さまざまな障害が立ちはだかる中で、単に組織から割り振られた仕事ではなく、課題に対する強い共感や所有感を抱いて「0→1」にしていくには、壁を乗り越えていく強い原動力が不可欠です。
2020年は、新型コロナウイルスという世界規模のパンデミックが猛威を振るった一年でした。企業によっては、本業に大きな影響を受けたり、ワークスタイルを大きく変えざるを得なかったところもあるでしょう。
しかし、危機を理由にイノベーションの成果を拙速に求めても、十分な成果にはつながりません。このままではダメだと感じ始めて、急に研修を受けたり、提案を募集したり、パートナーを探しても、運用を社内で間違っていれば徒労に終わります。
逆に、守りに入って新規事業の芽を摘んでしまうのも、必ずしも正しい戦略とはいえません。DX(デジタルトランスフォーメーション)がさらに加速し、業界の垣根がなくなりつつある今、数十人規模の組織でも、業界のそれまでのルールを上書きするようなイノベーションは実現可能です。パンデミックですら、新規事業を停滞させる理由にする必要はないのです。
次回は、社内の新規事業を支える組織文化や企業風土の考え方について、解説いたします。
[PROFILE]
大長 伸行
2009年よりデザインファームのコンサルタントとしてデザイン思考を活用した商品・サービス開発、イノベーション人材育成プロジェクトをリード。2017年1月株式会社bridgeを創業。多様な業種、組織の200を超えるイノベーションプロジェクトを横断し得た数々の失敗経験を形式知化し、企業内新規事業の創出とイノベーション組織づくりを支援する。特技は、後先考えずに安請け合いすること。
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御社の新規事業は、うまく機能していますか?従業員の間で、社内起業家として覚醒するマインドは十分ありますか?bridgeには、業種や規模ごとの豊富な実績と、組織に最適な具体的方法があります。ぜひ一度、ご相談ください。