CASE STUDY
課題
bridgeがしたこと
成果
大手国内化粧品メーカーのホーユー株式会社では、2023年1月より、持続的な成長を果たすことを目的とした新規事業創出プログラム「コノユビトマレ」が開始されました。
ステージは、プログラム応募から事業化審査までの「イキイキ ステージ」、実証実験やα版のリリースに向けた2年間の活動期間「ワクワク ステージ」の2つに分かれます。
今回は事業化審査を通過したメンバーに、ワクワク ステージの折り返し地点となる1年が経った現時点での感想をインタビュー。数日で消える、コスメタトゥーを手掛ける藤井さんと山口さん、新たなスキンケア製品を開発する堀江さんの3名にお話を伺いました。
─Q ワクワク ステージが始まって間もなく1年が経ちます。スタート当初はどんな気持ちでしたか?
堀江:始まる前は期待と不安が半々でした。開発から販売まで私一人の責任で進めることになりますので、やりがいが大きい分プレッシャーも強く感じていました。しかし、私自身のやりたいことは明確に決まっていたので、この大きなチャンスを必ず形にしたいという思いで臨みました。
藤井:私も「成功させるぞ」という意気込みがありました。実際に始まってみると大変なことも多いですが、成功するまでやり抜く気持ちは今も変わりません。
山口:やるべきことは本当に山積みなので、とにかくやるしかいないという気持ちでした。製品開発研究室に在籍時は特定業務に専任でしたが、新規事業の立ち上げとなると今まで経験してこなかった業務の方が多いので試行錯誤しています。
─Q 大変なことも多い中、解決の糸口はどのように見つけてきましたか?
山口:八方塞がりに思えるときは心も体も一度リフレッシュさせることをやっていましたね。次の日になると解決のアイデアが浮かぶこともあるので、一度冷静になることが大切だと実感しています。
藤井:新規事業開発に携わる経営企画室のメンバーだけでなく、色々な部署の方々に悩みを打ち明けることも意識していました。皆さん親身になってアドバイスをくれるので、積極的に頼って協力を引き出すことが突破口を見出すきっかけになったりします。
山口:社内だけでなく、外部の協力会社の皆さんからパワーをもらえることが多いですね。「絶対にクリアしましょう!」と支えてもらったことが何度もあり、パートナーの一員として参画いただき、とても有難く思っています。
堀江:私はひたすら走り続けてきました。性格上、あまり悩まないというのもありますが、長年やりたかったことを実現できるチャンスなので、悩む時間を惜しんで今できる打ち手に取り組んできた1年だった気がします。
─Q 改めてどんな1年だったのか、エピソードを交えて教えてください。
藤井:私たちコスメタトゥーチームは、2024年8月まで製品開発やECサイトの準備に奔走していました。8月にα版をローンチして実証実験をする計画だったので、とにかく開発・生産・事業のインフラ整備を2人で手分けして進めました。
山口:3月頃に製品設計を大きく変えることを決意したことが、印象に残っていますね。外部の方にプロトタイプ(試作品)を使ってもらったときに、見た目がこのままでは手に取ろうと思えないと厳しいフィードバックをいただいたんです。
藤井:「数日で消える、コスメタトゥー」というコンセプトに対してはニーズがあったはずなのに、形にしてみたらユーザーの反応が思いのほかイマイチで。品質の追求だけでは商品として手に取ってもらえないのだと痛感した瞬間でした。
堀江:私もブランドとしての方向性は構想段階と大きく変わっていません。でも、ユーザーに対するコミュニケーションの方法・表現の仕方はこの1年で変化してきました。経営企画室の事務局のメンバーや外部の有識者の方々、bridgeさんのサポートがあったからこそアイデアを商品に落とし込めたと思っています。
─Q 具体的にはどのように改善、ブラッシュアップをしたのでしょうか?
山口:当初は自分たちで商品パッケージやプロモーション方法を考えていましたが、対象のユーザーがZ世代の女性だったこともあり外部の協力を仰ぐことにしました。ただ、新規事業であるため予算は十分にありません。そこで有識者の方との面談で自分たちの熱い思いを共感してもらい、可能な範囲でお手伝いをしていただけないかと打診をしました。
藤井:自分たちの思いを MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)として言語化し、それを実現させるための製品がα版とはいえ手元にある。この2つを前面に打ち出していったんですよね。
山口:共感ベースでパートナーが集まってくると、ビジネスの範疇を超えたつながりが生まれることをすごく実感しました。皆さん口を揃えて「コスメタトゥーいいよね」「みんなで広めたいね」と言ってくれたのがとても嬉しかったです。
藤井:プレテストで美容関係の学生さんたちにコスメタトゥーを体験してもらったときに、すごく喜んでもらえたことがありましたよね。ほかにも、マーケティングを専門とする方々からもお墨付きをもらえたことで安心できたこともありました。悩みながら改善し、最後は自分たちの商品に確信を持てるようになる。この一連の流れは今後も忘れることはないと思います。
─Q この1年を通じて、自分が成長できたと感じる点について教えてください。
堀江:私は製品開発や研究に長く携わってきた人間なので、ビジネスのことや経営についてはわからないことばかりでした。それが、新規事業創出プログラムの中で提供されるワークショップなどに参加するうちに知識が増えたと実感しています。プロトタイピングの進め方もそうですし、ヒト・モノ・カネといった経営資源の考え方も大きな学びでした。
ほかにも、会社の役員や社長と新規事業開発に関するディスカッションの時間があったことや、リサーチの過程で知り合った社外の方たちとのコミュニケーション、ユーザーから評価をいただいた瞬間はどれも代えがたい経験になりました。一人で研究を進めている時間とはまた異なる喜びがあると感じます。
藤井:私はメンタルが鍛えられましたね。以前なら厳しい評価をいただくたびに落ち込んでしまっていましたが、今では正面から受け止めて改善に向き合えるようになりました。
山口:私はホーユーに12年ほど所属していますが、この1年が一番自分を成長させられたと思っています。仲間と一緒にゼロから製品を生み出して届けるまでの一連の体験もそうですし、自分の裁量でものごとを判断する経験も貴重だと思います。既存事業の中にいると部署ごとに与えられた役割があるので、守備範囲を超えることはなかなか難しい。でも自分たちの事業であればその制約もなく自分たちでビジネスを動かすことができます。
─Q 最後に、新規事業創出プログラム「コノユビトマレ」への想いと、今後の展望を聞かせてください。
藤井:コスメタトゥーチームの現状はまだプレテスト段階のため、お試し価格の提供しかできていません。今後は機能的な価値をさらに高めながら、多くのユーザーの方に手に取っていただけるよう実用化を目指していきたいです。
新規事業は未知の挑戦が多く、ドキドキ・ヒヤヒヤすることも一度や二度ではありません。それでも、プログラムステージの名称にもあるように、自分自身が仕事に対してイキイキ取り組める時間であったり、ワクワクしながら自分たちの事業に向き合える時間を得られる貴重な機会が得られます。社内でこれから応募したい人も、やりたいことがあるなら、人生で一回きりの体験をするような気持ちで飛び込んでみてほしいです。
堀江:コノユビトマレは、チャレンジしないのはもったいないほどのプロジェクトです。当社の場合は、挑戦して失敗をしたとしても咎められたりはしないはずです。もちろん大変なこともありますが、その先にある目的が見えていれば苦に感じることはないと思っています。
今後は、方向性や軸を保ちながらスケールさせていければ理想的です。ホーユーという企業のサイズに合わせて、一定の売上規模を超えなければスタートラインにも立てません。当面はそこを目標に頑張りつつ、将来的には会社から頼りにされるほどの事業部にまで大きく成長させたいと考えています。
編集協力:株式会社ソレナ