CASE STUDY
課題
bridgeがしたこと
成果
株式会社イトーキは、オフィス空間をはじめ、公共空間、専門空間、そして生活空間まで、人をとりまくさまざまな「空間」「環境」「場」づくりをサポートする総合ファシリティデザイン企業です。同社は130年を超える歴史の中で、デザインを進化させ続けてきました。今回はその裏側を支え続けた社内研修と、bridgeとの取り組みにフォーカスを当てます。
入社4年目のデザイナーに対して「デザイン思考」の研修を実施するイトーキ。背景には、ここ数年のビジネス環境が関係しています。以前は「こういうオフィスを作ってほしい」と具体的な依頼が通常で、与件を読み込み要望に合わせた成果物の制作をすればよかった。
しかし、国内各社で活性化する働き方改革の流れを受け、オフィスの在り方や労働環境そのものの改善を含めた提案力がデザイナーにも必須の条件に。
そこでbridgeでは、UX(ユーザーエクスペリエンス)、ペルソナデザインの手法を用いたユーザーモデリング、ペルソナを起点とした空間のコンセプトデザインを研修として用意。2017年から2021年まで、これまでに合計4回のプログラムをお届けしました。
本インタビューでは、FMデザイン統括部デザイン戦略室の石濱真理子さんと、首都圏第一デザイン設計室デザイナーの海老原祐介さんに、研修の様子や得られた成果についてお話を伺います。
石濱真理子(以下、石濱):当社では全国にデザイナーがいます。ところが、得られる知識や経験にバラつきが出てしまうことに課題感がありました。例えば都心と地方では携われる案件に違いがあります。トレンドや時流に沿った空間デザインは都心に寄ってしまうなどが一つの例です。
そこで、一人前のデザイナーになる4年次のタイミングで、外部講師を招いた研修を実施。暗黙知を明文化し、知見の共有を教育システムとして取り入れました。その中でも「デザイン思考」に着目したのは、お客様の要望により的確に応えていくためです。
以前は、当社の営業がお客様にヒアリングし、「こういうオフィスを作ってほしい」と言われたものを作れば満足していただけました。ところがここ数年、与件を読み込んでそれに応えるだけではなく、お客様の想像を超える「期待値超え」の提案をリクエストされることが増えたんです。
そこで、デザインを成果物だけでなく、空間から行動にまで及ぶものと捉え、お客様と一緒に価値創造できるデザイナーを社内で育成することにしました。そのためには、自分の持つ発想やセンスだけに囚われず、「デザイン思考」を手法として用いることが大切だと考えました。
石濱:一緒に手を動かしてもらえる、ものづくり研修ができる会社を探していたところ、bridgeさんに行き当たりました。他社さんで多かったのは、すでに研修のパッケージがあり、その中から選ぶスタイルのものです。しかしbridgeさんはゼロベースで、カリキュラムを作るところから一緒に考えてくれました。そこが一番大きかったです。
さらにbridgeさんの提案には、オフィス業界の外からの視点や、世の中のトレンドも含まれているため、社内からは見えなかった可能性にも気づかせてもらえます。最近でいえば、サステナブルやジェンダーに関する提案もありましたね。
石濱:2018年度の研修は今でもよく覚えています。世の中では、ウェルビーイングやABW(Activity Based Working)など、働き方に関するテーマが話題でした。bridgeさんからも「2025年のオフィスを考えよう」をテーマに、働く場の課題設定やコワーキングスペースの見学という提案がありました。
その時に、私たち以上に真剣に「働き方」について調べてくださって。その姿勢は外部講師というよりもパートナーの感覚です。その年は最終的に完成したパンフレットなどの制作物のクオリティも高くて、非常に充実した研修でしたね。
2019年度は「社員食堂のリデザイン」をテーマに、ペルソナを2パターン置きました。その結果カラーも生まれて、フロアを2つに分けるチームもあれば、1つのフロア内に両者にとって共感性の高い空間を作るチームもいて。発想や選択肢の幅を広げることに貢献できたんじゃないかなと思います。
この背景には、ペルソナ作りに集中した前年度の反省があったんですよね。「デザイン思考」の本来の意図とは多少ズレても、実務に寄せていくことが受講生にとっては意義があるんじゃないかと。こういったことも、毎回bridgeさんと相談させていただきながらワークショップを設計できているからこその改善だと考えています。
海老原祐介(以下、海老原):「デザイン思考」を学んだことで、考える軸の幅が広がったことを実感しています。数年前までは、何を作ればいいかが明確だったので、与件を読み込んで再現すれば良かった。それが最近では、与件がない案件も増えてきました。課題設定を自ら行い、世の中の背景や展望も含めたトータルの提案をしてほしいと明文化されているんです。
研修を受ける前の自分を思い返すと、表面的なところばかりを見て提案していたなと思うんです。それが今では、ペルソナの視点から考えたり、会社の上層部と現場の人たちそれぞれの考え方の差分を意識したりと、複数の視点を持てるようになりました。きっとそれ以前は、ほかの選択肢があることにすら気づかずに提案をしていたと思います。
イトーキが目指すのは、お客様への価値提供ができるデザイナーです。「デザイン思考」は、競合にないアイデア、手薄な分野の発見、ソリューションを組み合わせた新たな提案に踏み込めるため、商談や案件においても積極的に活用できていると感じます。
石濱:2019年の3期生は、社外のオフィスを借りて研修を実施しましたが、環境を変えてワークをすることの魅力が感じられましたね。「新規事業を立ち上げる時には、既存事業の目が入らないところがいい」と聞いたりもしますが、それを実感できました。
社内の会議室ですと、休憩時間に業務のことがちらついてしまい、思うように発想を高めることができなかったように思います。その点、会社を離れてのワーク環境は集中力が引き出せる分、学びも大きかったのではないでしょうか。
海老原:私も3期生だったのでよく覚えていますが、会社を離れての研修はとても楽しかったですね。学びの時間と仕事の時間を切り分けることの重要性がわかったというか。
少人数での研修だったことも効果的でした。自分が積極的に参加しなければワークが前に進まないので、「自分がやらなければ」と真剣度が上がりました。それが結果的に研修の理解度の促進にもつながったと思います。
デザイナーは日々、目の前の仕事と向き合うため、アウトプット過多になる傾向があるんです。言い換えると、インプットが不足して視野が狭くなってしまう。会社からは福利厚生も含めてサポートはありますが、仕事の数をこなしていると時間が取れないことも多々あります。
そういう意味で、外部講師の方を招いた研修機会があることは大きな価値がありますし、bridgeさんの幅広い専門領域からの知見からは刺激も受けています。ワーク中の何気ない一言にも発見があり、いかに自分が既存の枠に縛られているかに気づかされます。
石濱:bridgeさんとは、2021年までに合計4回の研修を行っています。毎回必ず振り返りをするようにして、前回の内容をさらに超えられるようにとブラッシュアップしてきました。
「デザインの空間から行動まで幅広く捉え、お客様と一緒に価値を作り出せる人になる」という目的から考えると、4回目でかなり近づけたと実感があります。2021年度はコロナ禍ということもあり、オンラインでの研修でした。この時も、新しい取り組みではあったものの、色々なエリアのデザイナーと一緒に、同じ環境で学べることのメリットを感じました。
時代の変化やスピードはまだまだ衰えません。求められる能力は日々変わり、習ったことがないことも求められる。常に課題に直面し続けるわけです。
そこを乗り越えるためには、コンペで競い合うのではなく、企業パートナーとして寄り添えることが大事だと考えています。与件別にものづくりをするのではなく、事業目線、経営目線からお客様にソリューションを提案をしていくことが求められる。
可能ならば設計のディテールに時間をかけたいところですが、それ以前の課題設定や問題の定義をしっかり行い、お客様にインパクトを残せるような提案を、デザイナー自身がダイレクトにできることが望ましいと思っています。
おかげさまでその目標に毎年近づけていますので、今後も最終的なデザインやビジュアルだけの勝負ではなく、背景や展望も含めたトータルな提案ができるイトーキとして、機会に応えていきたいですね。
bridgeでは、2022年度も引き続きデザイナー研修をサポートしていきます。日々加速する世の中の変化に合わせ、さまざまな専門分野の切り口から、研修カリキュラムの開発・改善に伴走します。
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